【応募が集まる】障がい福祉の採用 5つのコツ|媒体・求人票・面接・入職後3ヶ月の定着設計

【応募が集まる】障がい福祉の採用 5つのコツ|媒体・求人票・面接・入職後3ヶ月の定着設計

公開日: 2026-08-03 / 更新日: 2026-08-03 / 著者: 杉本 悠飛 (株式会社フェアテクノロジーズ 取締役・株式会社テクキャリ 取締役 / ウェルビーラーニング事業責任者) / 想定読了時間: 約10分

対象読者: 障がい福祉事業所 (GH・就労継続支援A型/B型・生活介護・児童発達支援・放課後等デイ等) の経営者・人事担当・管理者

この記事のポイント

  • 障がい福祉の採用難は「人手不足×低賃金イメージ×ミスマッチ」の三重構造で、求人広告費を積むだけでは解決しません。
  • 本記事では、中小事業所が 明日から低コストで動かせる5つの工夫 ─ (1) 媒体選び、(2) 求人票、(3) 面接、(4) 入職後3ヶ月のオンボーディング、(5) リファラル制度 ─ を実装手順まで踏み込んで解説します。
  • 採用は「入口」だけでなく「入職後3ヶ月の定着」で決まります。離職率を下げることは、最強の採用施策です。

1. 障がい福祉の採用が難しい3つの理由

障がい福祉の採用難は「業界構造×賃金イメージ×ミスマッチ」の3要因が同時に作用しています。1つだけ手を打っても効果は限定的で、3要因に同時アプローチする設計が必要です。

要因内容中小事業所が打てる手
① 構造的な人手不足介護・福祉分野の有効求人倍率は全産業平均を大きく上回る高い水準で常態化。介護領域との人材奪い合い構造もあるチャネル併用・リファラル強化
② 賃金イメージのギャップ処遇改善加算で水準は実際に改善しているのに、求職者に伝わっていない。「福祉=低賃金」のイメージで応募前に離脱求人票で「総支給+加算+昇給」を明示
③ ミスマッチによる早期離職入職3-6ヶ月で「業務イメージとの差」「人間関係」「キャリア不透明」で離脱入職後3ヶ月の伴走設計

求人票に「月給◯万円〜」とだけ書いても、求職者は他業界の同等職と比較して離脱します。一方、入職できても3-6ヶ月で辞められれば採用コストは無駄に。入口 (媒体・求人票・面接) と入職後 (オンボーディング・リファラル) を両輪で動かす のが本質です。

参考データ: 福祉・介護職員等処遇改善加算を取得している事業所の福祉・介護職員 (常勤の者) の平均給与額は、令和6年9月時点で 327,720円 (基本給等は253,710円)。前年同月比で +19,970円 (+6.49%) と上昇しています。同調査時点の加算取得率は87.0%です (厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査結果」。平均給与額=基本給(月額)+手当+一時金(4〜9月の支給金額の1/6・賞与等含む))。水準は上がっているのに求人票がその実態を映していない ─ これが②のギャップの正体です。

(出典: 厚生労働省「職業安定業務統計」「令和6年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査結果」)


2. 工夫1: 求人媒体の選び方 (Indeed・ハローワーク・人材紹介)

媒体選びの本質は「自事業所の採用ターゲット」と「媒体の利用者層」をすり合わせることです。万能の媒体は存在せず、ターゲット別に2-3チャネルを併用します。

媒体想定コスト主な応募層強み弱み
Indeed (無料+有料枠)月3-15万円20-40代・全国応募数が出やすい大量応募のスクリーニング負荷
ハローワーク無料30-50代・地域無料・自治体連携媒体力が弱く待ち姿勢になる
人材紹介エージェント想定年収の25-35%即戦力 (有資格者)確実な戦力化1人100-200万円規模
福祉系特化媒体月3-10万円福祉経験者中心ターゲットが明確母数が限定的
SNS (Instagram・LINE)ほぼゼロ20代中心文化・雰囲気を伝えやすい運用工数が継続的に必要

「無料+有料の2軸並走」がコスパ最強

中小事業所には ハローワーク (無料) + Indeed (有料スポット) の2軸並走が現実的です。日常はハローワーク・自社サイトで母集団を作り、急ぎの欠員時にIndeed有料枠でブースト ─ この設計で、年間採用コストを抑えつつ欠員リスクをコントロールできます。専任の採用担当がいないなら、媒体を絞った方が応募者対応の質も上がります。


3. 工夫2: 求人票の書き方 (給与・働き方・成長機会)

求人票の応募率を決めるのは「具体性×差別化×期待値調整」の3点です。他社と同じ抽象的な文面では、求職者の目に止まりません。

応募率を上げる5つの要素

  1. 給与は「総支給イメージ」で見せる ─ 「月給22万円〜」より「月給22-28万円 (経験・資格により決定) + 処遇改善加算手当 月2-4万円 + 賞与年2回 (前年実績2.5ヶ月分)」。年収換算 (例: 330-410万円) を併記。
  2. 働き方は数字で具体化 ─ 「働きやすい」では伝わらない。「シフト例: 9-18時・残業月平均5時間・有休消化率85%・年間休日120日」など実数で書く。
  3. キャリアパスを階段で示す ─ 「3年で担当ケース持ち→5年でサビ管基礎研修→6-7年でサビ管登用 (手当月3-5万円) →10年で管理者」。賃金レンジとセットで提示する。
  4. 未経験OKは本気で書く ─ 「未経験で入った先輩の声」「研修体制 (動画研修+OJT12週間)」を具体的に書く。形だけの「未経験OK」は警戒される。
  5. 法人の人格を出す ─ 「アットホーム」は逆効果。「月1回のサビ管交流会」「20代管理者が複数在籍」など事実を1-2行ずつ並べる。

4. 工夫3: 面接で見るポイント

面接で見るべきは「スキル」より「定着しそうか」「利用者観が合うか」の2点です。経歴の確認に時間を使い、本質を見逃すケースが多発しています。

4つの確認ポイントと質問例

ポイント質問例何を見るか
動機の真正性「なぜ福祉業界を選んだのですか」給与・通勤だけでなく自分の言葉で語れるか
利用者観 (権利擁護)「印象に残る利用者・支援対象者は?」一人の人として見られているか
困難場面の対応「困った経験・その後どうしましたか」抱え込まず相談できるか
長期就業の意志「3年後・5年後の働き方は?」キャリアパスのイメージを持てているか

「逆面接」で離脱率を下げる

面接の後半20分を「求職者から事業所への質問タイム」にあてる 逆面接 が、入職後ギャップの予防に有効です。残業実数・人間関係・賃金などネガティブな質問にも 正直に答える こと。「残業ゼロ」と言って実際は月20時間あれば、入職3ヶ月で確実に離職します。

面接は同席者2名以上で運用し、観点を分担します (例: 管理者=動機・キャリア / サビ管=利用者観・現場適性)。


5. 工夫4: 入職後3ヶ月の定着支援 (オンボーディング)

採用は「内定」ではなく「入職後3ヶ月の定着」がゴールです。早期離職を半減することは、求人広告費を倍にするより遥かに効果があります。

入職後3ヶ月のオンボーディング設計

  • 1週目: 入職時オリエンテーション・法定研修 (虐待防止・身体拘束適正化・感染症対策・個人情報保護・ハラスメント防止)
  • 2-4週目: シャドーイング (先輩支援員に終日同行)
  • 5-8週目: 半担当 (主担当のもとで部分業務・記録の書き方を習得)
  • 9-12週目: 担当ケースを持つ・カンファレンス発言・3ヶ月面談で正式評価

「最初の3日」と「月1の1on1」が定着率を決める

特に重要なのが 初日〜3日目。この3日で「歓迎されている」「自分の居場所がある」と感じられないと、その後の定着率が著しく下がります。初日は全員での歓迎+席と備品の準備、2日目はメンター (3年目以上) とのランチ、3日目は管理者との15分1on1。

加えて、入職後3ヶ月は 毎月1回30分の1on1 を管理者またはサビ管が必ず実施します。業務報告ではなく「困りごと」を引き出す場として、業務量・人間関係・メンタル・次月目標の順で構造化すると機能します。

法定研修は動画で標準化

入職時の法定研修を集合形式で都度実施すると、管理者・サビ管の工数が圧迫されます。動画研修 (eラーニング) で標準化 することで、入職タイミングに関わらず同質の内容を提供でき、受講記録が運営指導の証跡にもなります。浮いた工数を1on1や逆面接に回す ─ これが定着率向上の現実解です。


6. 工夫5: 既存スタッフからの紹介制度 (リファラル)

最強の採用チャネルは「現職スタッフからの紹介」です。文化適合度が高く、紹介者の責任感も働くため、定着率が他チャネルより明らかに高い傾向があります。

リファラルが効く3つの理由

  1. 文化適合度の事前スクリーニング ─ 紹介者が「うちに合う人」を判断してくれる
  2. 入職後の心理的安全性 ─ 知り合いがいる職場は最初の3ヶ月の離脱率が大幅に下がる
  3. 採用コストの圧縮 ─ 紹介ボーナス10-30万円は、エージェント手数料 (100-200万円) の1/5以下

リファラル制度の設計5ステップ

  1. 紹介ボーナスの金額設定 ─ 10-30万円 (試用期間終了後支給が一般的)
  2. 対象範囲の明文化 ─ 親族紹介・過去在籍者紹介の可否を整理
  3. 応募フロー ─ 紹介経由は通常応募と別ルートで優先対応 (返答スピード重視)
  4. 紹介者へのフィードバック ─ 採否結果・入職後の様子を共有 (次回紹介の意欲につながる)
  5. 社内周知 ─ 月1回の朝礼や社内チャットで「現在募集中ポジション+紹介制度」をリマインド

リファラルが回らない事業所の共通点

「現職スタッフの満足度が低い」「制度が周知されていない」「紹介ボーナス支給が1年後など遅すぎる」「採否結果が紹介者に伝わらない」。リファラル制度を作る前に、現職スタッフが『知人を呼びたい』と思える職場か を内省することが先です。

なお、A型事業所では 利用者やその家族・知人の紹介を受ける場合、雇用と利用の関係整理・選考の公平性 に注意が必要です。評価基準と意思決定プロセスを明文化しておきます。


FAQ

Q1. どの求人媒体が一番効果がある?

A. 万能な媒体はなく、ターゲット別の使い分けが必要です。応募数を稼ぎたいなら Indeed、地域人材・無料運用なら ハローワーク、即戦力の有資格者なら 人材紹介エージェント が有効です。中小事業所は「ハローワーク (無料) + Indeed有料スポット」の2軸並走がコスパ最強です。専任の採用担当がいない場合は、媒体を絞った方が応募者対応の質が上がります。

Q2. 未経験者を採用するメリット・リスクは?

A. メリットは「業界平均より定着率が高い」「自社文化を一から伝えられる」「採用コストが低い」点です。リスクは「育成リードタイムが長い (1人前まで1-2年)」「初年度の業務貢献度が限定的」「研修体制が必須」の3点。未経験OKを掲げるなら、動画研修+OJT12週間+月1の1on1までセットで設計しておくことが必須です。研修体制が未整備のまま未経験を採ると、3ヶ月以内の離職リスクが高まります。

Q3. 面接で必ず聞くべき質問は?

A. 知識やスキルより「動機の真正性」「利用者観 (権利擁護の姿勢)」「困難場面での相談行動」の3つを優先します。質問例: (1)「なぜこの業界を選んだか」、(2)「印象に残る利用者・支援対象者は」、(3)「困った場面で誰にどう相談したか」。面接の後半20分を「求職者からの逆質問」にあてる 逆面接 も、入職後ギャップ予防に有効です。

Q4. 障がい福祉の給与水準はどのくらい?

A. 公表統計で確認できる直近の水準は次の通りです。福祉・介護職員等処遇改善加算を取得している事業所の福祉・介護職員 (常勤の者) の 平均給与額は令和6年9月時点で327,720円、うち基本給等は253,710円。前年同月比で +19,970円 (+6.49%) と上昇しています (厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査結果」。平均給与額=基本給(月額)+手当+一時金(4〜9月の支給金額の1/6・賞与等含む))。

ただしこれは職種を問わない全体平均で、実額は職種 (支援員・サビ管・管理者)・経験・地域・法人規模で大きく変わります。求人票には業界平均ではなく 自事業所の実額 を「基本給+処遇改善加算による手当+賞与+昇給ベース」の内訳で書き、年収イメージまで示してください。全体平均だけを載せても、求職者は自分の手取りを想像できません。

Q5. 離職率を改善するには何から始めるべき?

A. 入職後3ヶ月のオンボーディングの整備が、最も投資対効果の高い施策です。具体的には (1) 入職初日〜3日目の歓迎設計、(2) 月1回の1on1 (管理者またはサビ管が実施)、(3) 法定研修の動画化による基礎研修の標準化、(4) メンター制度 (3年目以上の先輩がランチ等で伴走) の4点です。求人広告費を増やすより、離職率を半分にする方がはるかに採用コスト全体を下げられます。


まとめ

  • 障がい福祉の採用難は「人手不足 × 賃金イメージ × ミスマッチ」の三重構造。1施策では解決しません。
  • 工夫1: 媒体選び ─ ハローワーク+Indeedの2軸並走がコスパ最強。エージェントは即戦力時のみ。
  • 工夫2: 求人票 ─ 「総支給+加算手当+キャリアパス+残業実数」など、具体性で勝負。
  • 工夫3: 面接 ─ スキルより「動機・利用者観・相談行動」。逆面接で入職後ギャップを予防。
  • 工夫4: 入職後3ヶ月の定着支援 ─ 最初の3日と月1の1on1。法定研修は動画で標準化して工数を1on1に回す。
  • 工夫5: リファラル制度 ─ 文化適合度が高く定着率が高い。現職スタッフが「呼びたい職場」が前提。

「採用が難しい」を「採用と定着の両輪で安定させる」に変えるのは、求人広告費の積み増しではなく、入口設計と入職後3ヶ月の伴走 の見直しです。本記事のうち1つだけでも、今週から着手してみてください。

なお、サビ管の育成・定着については別記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

サビ管 育成の5ステップと離職対策


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参考文献

本記事の内容は2026年8月時点の公表情報に基づきます。給与水準・有効求人倍率・加算制度は時期により変動します。最新の法令・告示・自治体運用については厚生労働省および所管自治体の公式情報をご確認ください。個別事案の労務判断は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。


著者プロフィール

杉本 悠飛 (Yuhi Sugimoto)

株式会社フェアテクノロジーズ 取締役 / 株式会社テクキャリ 取締役 / ウェルビーラーニング事業責任者

障がい福祉特化の動画研修サービス「ウェルビーラーニング」を立ち上げ、累計1,000社以上への導入を支援。株式会社テクキャリ(就労継続支援A型事業所)の取締役として、サビ管配置・個別支援計画作成・モニタリング・運営指導対応の実務知見を持つ。


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