公開日: 2026-07-23 / 更新日: 2026-07-23(2026年7月時点の情報) / 著者: 杉本 悠飛 (株式会社フェアテクノロジーズ / ウェルビーラーニング事業責任者) / 想定読了時間: 約6分
対象読者: 障がい福祉事業所 (GH・就労継続支援A型/B型・生活介護・児童発達支援・放課後等デイ等) の経営者・管理者・事務担当者
この記事のポイント
- 処遇改善加算を算定した事業所は、毎年度「実績報告書」の提出が必須。期限は最終の加算支払月の翌々月末で、多くの事業所は7月31日(根拠: 厚労省通知・障障発0307第1号「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」)。令和7年度分は通常の場合、2026年7月31日(金)が提出期日です。
- 実績報告を提出しないと、加算の算定要件を満たさないものとして、受け取った加算の返還を求められる場合があります(出典: 大阪府の令和7年度実績報告案内)。
- 頻出ミスは「賃金改善額の不足」「法定福利費の扱い」「対象職員の範囲」「複数事業所の按分」「自治体ごとの提出方法の見落とし」の5つ。提出前チェックリストで最終確認を。
※本記事は2026年7月時点の情報に基づきます。様式・提出方法は指定権者 (都道府県・市町村) により異なるため、必ず自治体の案内をご確認ください。
提出前チェックリスト(7項目)
- 提出期限を自治体の案内で確認した (多くは7月31日。自治体により日付・方法が異なる)
- 賃金改善の実績額が、加算として受け取った額を下回っていない
- 法定福利費等の事業主負担増加分の算入ルールを確認した(賃金改善額に含めることができる・厚労省通知)
- 対象職員の範囲 (加算の対象職種) と配分実績が計画と整合している
- 複数事業所を一括作成する場合の事業所別の内訳・按分を確認した
- 職場環境等要件の実施状況を記載した(実績報告書様式に記載欄あり)
- 提出方法 (電子申請システム・メール等) とファイル形式 (Excel指定等) を自治体の案内で確認した
1. 処遇改善加算の実績報告とは
処遇改善加算の実績報告とは、加算として受け取った額を職員の賃金改善に充てたことを、事業所が毎年度、指定権者 (都道府県・市町村) に報告する手続きです。
処遇改善加算は「職員の処遇改善に使うこと」を条件に支払われる加算のため、計画 (処遇改善計画書) と実績 (実績報告書) の両方の提出が算定要件に組み込まれています(実績の報告は大臣基準告示第2号イ(4)等に規定)。
なお、処遇改善系の加算は令和6年度報酬改定で、令和6年6月から「福祉・介護職員等処遇改善加算」に一本化されており(厚労省通知)、令和7年度分の実績報告は一本化後の様式での提出になります。
2. 期限はなぜ「7月31日」なのか — 期限の仕組み
提出期限は「各事業年度における最終の加算の支払があった月の翌々月の末日」と定められています(厚労省通知「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」障障発0307第1号・(3)実績報告書等の作成・提出)。
多くの事業所では、3月サービス提供分の報酬 (加算を含む) が5月に支払われます。その翌々月末=7月31日が期限になる、という仕組みです。令和7年度 (2025年4月〜2026年3月サービス提供分) の実績報告は、通知でも「通常の場合、令和8年7月31日となる」と明記されています。
注意: 提出方法・様式の運用は指定権者ごとに案内が異なります。「行政オンラインシステムのみ・Excel形式のみ」など提出手段を限定している自治体もあります (例: 大阪府)。必ず自事業所の指定権者のホームページ・通知をご確認ください。
3. 書き方・準備の流れ (4ステップ)
実績報告書の作成は「①様式の入手 → ②賃金改善実績の集計 → ③計画との突合 → ④提出」の4ステップで進めます。
- 様式の入手: 指定権者のホームページから令和7年度用の実績報告書様式 (別紙様式3系。例: 3-1・3-2。自治体により3-3等を含む場合があります) をダウンロードします (厚労省の標準様式をもとに自治体が案内しています)。
- 賃金改善実績の集計: 加算として受け取った総額と、職員に支払った賃金改善の総額 (基本給・手当・一時金等) を集計します。賃金改善額が加算受領額を下回らないことが大原則です (加算の算定額に相当する賃金改善の実施が要件・厚労省通知)。
- 計画との突合: 年度当初に提出した処遇改善計画書と、実績 (配分方法・対象職員・職場環境等要件の取組) がずれていないかを確認します。
- 提出: 自治体指定の方法 (電子申請・メール等) で期限までに提出します。提出後は根拠資料と併せて2年間保存することとされています (厚労省通知)。運営指導 (実地指導) の際に提示できるようにしておきましょう。
4. よくあるミス5選
最も多いのは「数字のずれ」ではなく「ルールの読み違い」によるミスです。
自治体の案内や専門家の解説で繰り返し指摘されているポイントを5つ挙げます。
- 賃金改善額が加算受領額に届いていない: 年度末に不足が判明した場合、一時金での追加支給等の取り扱いが認められるかは指定権者への確認が必要です。
- 法定福利費の扱いの誤り: 賃金改善に伴う法定福利費等の事業主負担増加分は賃金改善額に含めることができますが (厚労省通知)、算入方法を誤るケースがあります。
- 対象職員の範囲の誤り: 加算の対象職種でない職員への配分の可否・範囲の整理を誤るケースです。とくに令和8年6月施行の改定で、処遇改善加算の対象は従来の福祉・介護職員から「障害福祉従事者」へ広がることとされています (令和8年3月31日公布の告示によるもの)。令和7年度分と令和8年度分でルールが異なる可能性があるため、それぞれの年度の様式・記入要領に沿って確認してください (詳細記事は準備中)。
- 複数事業所の按分・内訳の記載漏れ: 法人で複数事業所を一括作成する場合、事業所ごとの内訳が求められる様式があります。
- 提出方法・期限の自治体差の見落とし: 「オンライン提出のみ」「Excel形式のみ (PDF不可)」等、自治体独自の指定を見落として期限に間に合わないケースです。
5. 未提出・不備の場合のリスク
実績報告書を期限までに提出しない場合、「加算の算定要件を満たさず、介護給付費等の返還対象となる」とされ、あわせて運営指導 (実地指導) の対象となる場合もあります (出典: 大阪府「令和7年度 福祉・介護職員処遇改善実績報告書の提出について(障がい)」取得日2026-07-16)。
処遇改善加算は加算額が大きく、返還となった場合の経営影響は小さくありません。期限直前ではなく、余裕をもって集計・確認を進めることをおすすめします。
なお、不備があった場合は自治体から修正依頼が来るのが一般的ですが、期限後の対応は自治体の運用によります。不明点は早めに指定権者へ相談してください。
6. 来年度に向けて — 研修体系と記録の整備で「次の実績報告」に備える
年度途中から研修計画・実施記録・受講履歴を整理しておくと、キャリアパス要件や運営指導時の説明資料を確認しやすくなります。
処遇改善加算のキャリアパス要件には、資質向上のための計画の策定と、その計画に係る研修の実施または研修機会の確保が含まれます (キャリアパス要件Ⅱ「研修の実施等」・厚労省通知)。なお、実績報告そのものでは、賃金改善額・配分実績・自治体指定様式の確認が別途必要です。
ウェルビーラーニングは、障がい福祉に特化した動画研修 (eラーニング) を累計1,000社以上に提供しており、受講履歴を自動で記録できるため、研修実施状況を確認するための資料として活用できます(自治体や運営指導で求められる資料は、各指定権者の案内に沿ってご確認ください)。法定研修と合わせて職員の研修体系を整えたい事業所は、お気軽にご相談ください。
関連して、虐待防止研修 完全ガイドや個別支援計画の書き方 完全ガイドも、研修・記録・運営指導対策を整理する際の参考になります。
よくある質問
Q. 処遇改善加算の実績報告はいつまでに提出すればよいですか?
A. 最終の加算支払月の翌々月末が期限で、多くの事業所は7月31日です。令和7年度分は通常の場合2026年7月31日(金)です (厚労省通知)。提出方法は指定権者により異なるため、必ず自治体の案内をご確認ください。
Q. 実績報告を提出しないとどうなりますか?
A. 加算の算定要件を満たさないものとして、受け取った加算の返還を求められる場合があります (自治体の案内による)。期限内提出を前提に、早めに指定権者の案内をご確認ください。
Q. 実績報告書の様式はどこで入手できますか?
A. 指定権者 (都道府県・市町村) のホームページで案内されています (標準様式は別紙様式3系。自治体により構成が異なります)。必ず自事業所の指定権者の最新版を使ってください。
Q. 賃金改善額が加算額に足りない場合はどうすればよいですか?
A. 原則として要件を満たさないことになります。一時金での追加支給等の取り扱いが認められるかは自治体により運用が異なるため、早めに指定権者へ相談してください。
Q. 実績報告の作成を代行してもらえますか?
A. 当社では実績報告書の作成・提出の代行は行っていません。個別の作成支援・労務判断は、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。当社は研修体系の整備 (研修の実施記録・受講管理) の面からサポートします。
まとめ
- 処遇改善加算の実績報告は毎年度必須。多くの事業所は7月31日が期限 (令和7年度分は通常の場合2026年7月31日)
- 未提出は加算返還のリスク。提出前チェックリストで最終確認を
- 来年度に向けては、研修・受講記録を整理しておくと、キャリアパス要件や運営指導時の確認に備えやすくなる
研修体系の整備・受講記録の管理でお困りの方は、お問い合わせ からお気軽にご相談ください。障がい福祉に特化した動画研修「ウェルビーラーニング」の資料をお送りします。
本記事は2026年7月時点の公開情報に基づく一般的な情報提供であり、個別の事業所への法務・労務アドバイスではありません。処遇改善加算の要件・様式・提出方法は指定権者 (都道府県・市町村) により異なり、制度は改正される場合があります。最新の情報は必ず厚生労働省・自治体の一次情報でご確認のうえ、個別の判断は社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
著者プロフィール
杉本悠飛 (株式会社フェアテクノロジーズ 取締役COO)。障がい福祉特化の動画研修サービス「ウェルビーラーニング」(累計1,000社以上導入) の事業責任者。グループホーム・就労継続支援A型の運営知見をもとに、研修・運営に関する情報を発信している。
